NPNとPNPのセンサ出力について

こんにちは、まつりぬいです。

本日は設備をつくる、動かす上で重要な、NPNとPNPのセンサ出力について簡単な記事を書きたいと思います。

  1. NPN、PNPとは?
  2. 安全の話
  3. 業界でのトレンド

1.NPN、PNPとは?

 NPN、PNPとは何なのか、メカ屋さんからよく聞かれますが、ざっくり言うとトランジスタの仕様の違いになります。n型半導体とp型半導体をどのように接続し並べるかによって、素子としての特性が変わり、用途に応じて使い分けて電気回路を組むことになります。

 トランジスタ自体の仕組みは、村田製作所のこのHPが解りやすいですね。

  https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-transistor

 トランジスタはいわばスイッチのようなもので、ベースに電圧を印加する事で、エミッタとコレクタ間に電流を流すことができます。設備で使う機器で言うと、リレーの代わりになりますが、リレーよりも寿命が長いです。また、電流を流すだけでなく、電流を増幅させたり、流れる向きに決まりがあることから、電気回路内の電流の流れを制御するためにも使われますが、FA系の設備を考えるうえで、いったんはスイッチの代わりだと認識してください。

トランジスタは電流Icを流す/流さないを制御できる

 で、これがFA業界の中でどのような問題が出てくるかと言うと、「センサ出力の配線をどうするか」に大きく関わってきます。工場内の設備に目を向けてみましょう。PLC等の機器から信号が出力されている機器には、どういったものがあるでしょうか。例えば、異常を知らせるランプ、7segの表示機、シリンダーを動かすためのバルブ、動作物を検知するためのレーザー……

 NPNとPNPのどちらを選ぶかによって、これらの機器への配線が大きく変わってきます。ざっくり示すと、下図の通りの違いになります。負荷の設置場所の違いに注目してください。

NPNの配線例
PNPの配線例

 NPNは、負荷を24V側。PNPは負荷を0V側に置いていますね。

 なぜ、このような違いが生じるのでしょうか。

 理由は、上記で説明したトランジスタの仕組みの違いによるものです。NPNの場合、コレクタとベース、コレクタとエミッタに電圧が印加されると、電流はコレクタからエミッタの方へ流れます。負荷をつなぐ装置側からすると、電流を引き込む事になるので、上図のNPNを使用する構成は、シンクロジックとも呼ばれます。また、仮にこのNPNの仕組みにした時に、負荷を0V側に配線すると、常に電圧が印加される状態になってしまいます。パトライトのランプ等であれば問題ないでしょうが、シリンダー等の動作物の制御に関わるバルブやリレーを配線する場合は要注意です。

 PNPの場合はNPNの逆で、負荷は0V側に配線します。こちらは、負荷をつなぐ機器側からすると、電流を供給する事になるので、ソースロジックとも呼ばれます。

2.安全の話

 NPNとPNPは設備の安全の考え方にも関わってきます。先に、NPNで配線を間違える話を書きましたが、NPNとPNPを比較した場合、PNPの方が安全であると一般的に言われています。

 その最たる例が、何かしらのトラブルで負荷側で地絡が発生した時の、NPNとPNPでの負荷のふるまいの違いです。

NPNで地絡した場合
PNPで地絡した場合

 NPNの場合、地絡すると負荷に電圧がかかってしまいます。電圧がかかるという事は、ランプであれば光り、リレーであればリレーが動作し、バルブであればバルブに電圧が印加されシリンダーが動きます。つまり、あらゆる機器が動作できる状態になるため、例えばシリンダーが急に動き、作業者の手がシリンダーに挟まれてしまう、という事故も起こりかねません。

 一方で、PNPの場合は、負荷の場所で地絡したとしても、もともと0V側に負荷があるので、電位差が発生せず、負荷に電圧がかかりません。なので、負荷に電圧がかかっていない状態を、設備として安全方向に設計しておけば、地絡しても作業者は動作物に手が挟まれたりせず安心、と言えるわけです。

 余談ですが、私はPNPに慣れているのでPNP派です。

3.業界のトレンド

 一般的に、日本とアメリカがNPNが主流で、欧州がPNPが主流と言われています。ただし、日本のメーカーでも欧州に工場を構えているメーカーの場合は、日本国内の工場でもPNPを採用している事もあります。

 特に、自動車業界は元々設備の安全に厳しいことで有名ですが、欧州に進出している企業も多いため、ここ数年建てられた新しい工場や新ラインはPNP仕様が多い傾向にあるようです。

 なぜそうなるのか。メーカーにとって日本の工場は、世界のマザー工場の役割を果たすことになります。また、メーカー(自動車業界)は標準の統一化を強く推進するので、わざわざ国ごとに違う仕様や標準を量産する事も避けたいはずです。なので、一度欧州での工場立ち上げを経験したメーカーでは、マザー工場にある設備がどんどんPNPに置き換わっていく、という流れが起きており、そういった傾向が今後もどんどん、顕著になっていくのではと私は考えています。

 いずれにせよ、制御屋さんとしてご飯を食べていく上では、どちらの配線にも慣れておいた方がいいと思いますので、機会があれば、それぞれの配線を実際にやってみて、違いを確認しておいた方が良いと思います。私はしっかり、配線ミスを起こしました。

 それでは、また。

 

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