三菱PLC(iQ-R用,Qも可)とオムロンのRFIDリーダーV780を、通信プロトコルを使ってModBus/TCPで接続する方法①

こんばんは。まつりぬいです。

本日は、標記の通り通信プロトコルを使って、オムロン製RFIDのV780との接続方法について解説します。長くなりますので、記事を2つに分けます。今回はまず、V780と通信プロトコルを採用する理由について解説したいと思います。

※第2回の記事はこちら

オムロンのV780の詳細については下記のHPを参照ください。

https://www.fa.omron.co.jp/products/family/3630/download/manual.html

  1. V780とは?
  2. 通信プロトコルとは?
  3. なぜ通信プロトコルを使うのか?

1.V780とは?

 V780とは、オムロン製のRFID(radio frequency identifier)です。主な機能として、IDタグに製品の情報を書き込む、またはタグに書かれた情報を読み取る機能があります。従来の機器、特に前シリーズのV680シリーズとの大きな違いは、長距離通信(30m)ができる点にあります。また、通信方式としては、Eternet/IPまたはModbus/TCPのどちらかを選択する事になります(それぞれ、型式が異なります)。

 RFIDを使うと何が便利なのでしょうか。よくある用途としては、ワークや製品の情報を後工程に伝える際に使用します。製品のロットや刻印番号、その他様々な情報を離れた後工程に伝えるシーンを思い浮かべてください。いちいち紙に情報を書いて製品に張り付けて、それを受け取った後工程は、その紙を読んで、データを入力、または帳票にデータを書き写す、といった作業をやると、書き写しのミスであったり、書類の紛失であったり、読み取りのミスを起こす可能性があります。そもそも読み書きの作業も時間がかかるし人も必要で、もったいないとも思いませんか?

 RFIDとIDタグを使うと、その手作業を代わりに自動で行う事ができます。それが例え、ライン同士がフィールドネットワークで接続されていない隣の建屋にあったり、遠く離れた工場であったとしても、IDタグを読み書きできるリーダーさえあれば、必要な情報を受け渡すことが可能となるのです。

 今回の説明では、ネットワークが繋がっていない設備間のワーク搬送の際にIDタグを使う場面を想定し説明します。

2.通信プロトコルとは? なぜ通信プロトコルを使うのか?

 今回、オムロン製のV780と三菱電機製PLC(iQ-R,Qシリーズ)をModbus/TCPで接続するために、通信プロトコル機能を使用します。

 通信プロトコルとは、ざっくり述べると、三菱電機のPLCと、三菱電機のPLCが標準ではサポートしていないが交信内容が明らかになっている通信機器やユニットやアプリケーションを、EterNetを介して通信させ、情報のやり取りを行わせる機能となります。

 通常、TCP/IPなどネットワークを使った通信は、あらかじめ通信するための電文のフォーマットが決まっており、やり取りの際にはそのフォーマットに従って電文に内容を記述し、情報をやり取りします。

 わかりにくいので、AさんとBさんがやり取りする手紙で例えます。

 AさんからBさんへの手紙はBさんの住所が2行、Bさんの宛名が1行、要件が2行と決まっていると考えてみてください。Bさん側は最初の2行の住所と宛名の1行については、自分宛の手紙かどうかを判断するために使用します。そして、手紙が自分宛と判断できれば、要件の2行を読んでどんな内容の手紙かを読み解きます。

手紙のフォーマット

 そして、Bさんは細かい返事の前に1度、Aさんに対し返事を書きます。こちらのフォーマットは、Aさんの住所が2行、Aさんの宛名が1行、要件は「読みました」という決まった文面とします。Aさん側は、Bさんから送られてきた手紙を読んで、最初の2行の住所と宛名1行で自分への手紙かどうか判断し、要件の「読みました」の文章を見て、先ほど送った手紙が無事送信されたことを確認することになります。

Bさんからの返信、要件は決まった内容で返す

 手紙でざっくりと例えてみましたが、このAさんとBさんとのやり取りと同じように、TCP/IPを使った通信では、任意のフォーマットを決めてアプリや機器同士で通信を行うことになります。その通信のフォーマットは、機器やアプリによって様々です。なので、三菱電機のPLCとしても、全ての機器同士の通信を網羅し標準でサポートする事は至難の業ですが、逆にそのフォーマットさえ任意に設定し用意する事ができれば、あらゆる機器と三菱のPLCは通信する事が可能になります。通信プロトコルとは即ち、このユーザー側で任意にフォーマットを用意しあらゆる機器と通信するための機能なのです。

3.なぜ通信プロトコルを使うのか?

 今回なぜ、通信プロトコルを使用するかですが、理由は下記の2点です。

 ①現時点でiQ-RでV780に対応した専用ユニットが発売されていない

 ②オムロン側がCC-Link系の通信方式をサポートしていない

 ①については、例えばRFIDの一つ前のシリーズのV680シリーズであれば、下記リンク先のような専用ユニットが販売されています。

三菱電機エンジニアリング:V680シリーズ対応品

 しかし、現時点(2021/4/27)ではV780対応したユニットは発売されていません。また、V780は②のように三菱電機PLCでよく使うネットワーク方式である、CC-LinkやCC-Link IE Fieldはサポート対象外です。

 よって、現時点でiQ-RとV780を接続するためには、Modbus/TCPまたはEterNNet IP用のネットワークを独自で構築する必要があり、その対応のため、ユニット購入やネットワーク構成を見直す必要が出てきてしまうのです。

 では、必要最低限の改造や工事で済ませるにはどうすればよいか。この記事で提案するシンプルな構成が下図の通りで、この構成で通信するためには、通信プロトコル機能を使いこなす必要が出てくるのです。

接続の例

 上記の構成だと、既にRJ71EN71が設置されていて、EtherNetのネットワーク上にPLCもRFIDもどちらも簡単に接続できる状態になっていれば、RFIDの取り付け配線工事と、通信プロトコルの設定、ラダーの準備だけで対応が完了します。

 具体的にどういった設定、回路を組めば良いのかは、記事も長くなってきましたので、次の記事でまとめたいと思います。

※第2回の記事はこちら

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